不育症外来 infertility

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不育症外来について

1人の女性が一生のうちに流産を経験する確率は約40%、1回の妊娠で流産をする可能性は、平均10%前後とされています。仮に10%とすると、2回の流産を経験する確率はわずか1%でしかありません。さらに、3回ともなると0.1%程度となり、何らかの原因があると考えられます。

日本産科婦人科学会の定義では、2回の流産を「反復流産」、3回以上流産を繰り返すことを「習慣性流産」といいます。不妊症は妊娠しない状態を指しますが、習慣性流産を含め、妊娠しても流産や死産により妊娠が継続できない状態を不育症といい、全国で毎年4万人が診断され、累計200万人もの患者さまがいらっしゃると推定されています。不育症は、一般的な疾患であるともいえます。

不育症の原因がある方は、一般的に約80%以上の確率で流産するといわれています。しかし、治療を行えば、その確率を下げることができます。事実、当院では、妊娠10~12週まで経過を観察させていただき、その後分娩医療機関へご紹介させていただきますが、不育症の卒業率は80%以上となっています。10回流産されている方が無事出産したというケースもあります。

検査や治療も保険適用となるものが多くなり、以前より治療しやすくなっています。2回以上の流産をされている方は、まず検査をお勧めします。もちろん、受診のご予約は不要です。いつでもご来院ください。

当院は不妊だけでなく、不育症にも対応可能な医療機関です。日本では実施施設数の少ない検査や治療にも対応しています。

検査費用はスクリーニング検査で約45,000円。

アスピリン療法、ヘパリン療法、漢方療法、免疫療法など、原因に合わせ様々なバリエーションでの治療をご提供しています。

ヘパリン療法なども保険適用となったため、検査・治療も比較的安価にお受けいただくことが可能です。

血液凝固異常

プロテインSやプロテインCは、血液を固めようとする因子を不活性化させる作用があり、血液が固まるのを防いでいます。プロテインSやプロテインCが減少すると血液凝固が起こりやすくなり、血栓ができやすくなります。妊娠中はこれらの量が低下し、出産などの出血に際して血液を止めるように働くため、血が止まりやすい状態、すなわち血栓のできるリスクがより高くなってしまいます。
特にプロテインS 欠乏症は白人では、0.03 ~ 0.13% と低率ですが、日本人では1.6% と高率で、日本人に多いのが特徴です。
血液凝固第Ⅻ 因子は、血液凝固因子の一つで、欠乏するとプロテインS欠乏症などと同様に血液凝固が起こりやすくなります。

これらの血液が固まりやすい状態は、軽度であれば日常生活に何ら支障はありません。しかし、妊娠が成立した後で血栓が形成されてしまうと、胎盤の血管は細いため血液循環が悪くなり、流産の原因となってしまうことがあります。

血液凝固異常の治療法は、血液を固まりにくくしてあげるアスピリン療法やヘパリン療法があげられます。アスピリン療法は血液凝固に関与する血小板に対し、固まりにくくすることで流産予防効果を発揮します。メリットは、安価なお薬のため使用しやすいことであり、デメリットは血液凝固に対する作用としてはやや弱い作用であるということです。
ヘパリン療法はアンチトロンビンという物質に作用し、血液の液体成分そのものを固まりにくくする作用があります。メリットは大変強い抗凝固作用があることと、一部の不育症に対する保険適用があり、従来に比べて使用しやすくなったことです。デメリットは、半減期が約半日と短いため、1日2回の自己注射を、妊娠後期まで継続していただかなくてはならないため、非常に大変であることです。

抗リン脂質抗体症候群

抗リン脂質抗体は、膠原病などの病気の際や不育症例の一部に認められる自己抗体で、リン脂質という細胞の膜などを構成する重要な成分を攻撃し、血管炎などを引き起こすことで血栓をできやすくしてしまう抗体です。強陽性の場合は、流産の原因に止まらず、他の動脈や静脈などの閉塞の要因にもなり、脳梗塞などのさまざまな疾患を引き起こして生命にも大きく影響してしまうこともあります。

抗カルジオリピン抗体、ループスアンチコアグラント(ループスAC)、抗フォスファシジルエタノールアミン抗体(抗PE抗体)などが知られているため、当院のスクリーニング検査で測定しております。抗PE抗体のみが陽性である場合は、生命に影響するようなことはまずありませんが、一定の確率で流産の原因になることが知られています。

治療法は、血液凝固異常同様、血栓の形成を抑制することであり、アスピリン療法、ヘパリン療法などを実施します。また、多くの方で漢方療法やステロイド療法を併せて行います。重篤な抗リン脂質抗体陽性の場合は、抗リン脂質抗体症候群として難病に指定されており、医療費の公費負担の対象となりますが、残念ながら不育症のみで公費負担となることはありません。しかし、一部にヘパリンの保険適用が認められたことにより、多くの方がこの治療を受けやすくなり、無事出産されています。

免疫着床障害

マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)は1978年に発見された糖蛋白で、マクロファージという白血球の産生を促すとともに、マクロファージからさらにM-CSFなどの免疫調整因子の産生を促して好中球などの他の白血球などの産生を促す物質です。またM-CSFは、骨の代謝やコレステロールの代謝などにも関与するという報告もされています。
不妊・不育分野では、この因子が妊娠の際に現れる脱落膜細胞や絨毛細胞によっても産生されており、これらの分化にも関与しているということ、動物実験では、M-CSFの投与により排卵数の増加が認められているということが明らかになってきている一方で、不育症の患者さんでは、このM-CSFの血中濃度が低いということが明らかになっています。なぜ不育症の患者さんでM-CSFが低値を示すのかは、未だ明らかになっていない部分もありますが、着床というプロセスにおいては、白血球などの免疫細胞が極めて重大な役割を果たしていることから、着床と妊娠の維持にはM-CSFが低いと都合が悪いという説や、基準値が低いため妊娠後に現れる細胞からの分泌だけでは不十分であるという説など、さまざまな考え方があります。ただ、M-CSFが低いと着床や妊娠の維持には支障が出ることは明らかですので、対症療法をしてあげる必要があります。

当院では、M-CSF低値の方にはピシバニール療法を実施しています。がんの免疫療法に使用する薬であり、細菌の一部を処理したものが主成分となっています。このお薬は細胞性免疫の活性化、つまり白血球の産生と白血球からの各種成分の産生を促します。ピシバニールを投与した場合、まず細胞性免疫の最初の役割を担うマクロファージが集まってきます。上記の通り、マクロファージを刺激するということは、結果的にマクロファージを介してのM-CSFの産生を促すことになります。

ちなみに、M-CSF製剤というのもあるのですが、これは極めて高価な薬(1回40,000円程度)でありなかなか使用しづらいため、マクロファージを介して類似の作用が期待できるピシバニールを使用しています。
副作用は、接種部位が数日赤く腫れ、まれに微熱が出るということです。(ペニシリン系の薬剤にアレルギー症状を起こしたことがある方は、接種ができなかったり注意が必要となることがありますので、あらかじめお申し出ください。)
抗がん剤とはいっても、免疫療法に使用する薬剤のために、抗がん剤のイメージにありがちな髪の毛が抜けたり強い吐き気におそわれるなどといった副作用はありません。

NK細胞(ナチュラルキラー細胞)は、リンパ球の一種で、natural(生まれついての)killer(殺し屋)という名の示すとおり、体内に侵入した異物を迅速かつ強力に傷害し、排除してしまう作用を持っています。

異物が侵入したら排除してくれるNK細胞ではありますが、不育症の分野では「過剰防衛」を行ってしまうこともあります。

赤ちゃんというのは、母親の子宮内で発育しますが、母親にとっては異物に他なりません。母親と子どもは血はつながってはいますが、免疫的には全くの異物の存在であり、母から子どもへ臓器移植をしても、免疫抑制剤を使用しなければ拒絶反応が発生してしまいます。赤ちゃんという異物が、排除されずに約10ヶ月間、お腹の中で健やかに育っていくためにはいくつかのプロセスがありますが、一番重要なのは胎盤の存在です

拒絶反応は、細胞にあるHLA抗原(ヒト白血球型抗原)というものをNK細胞が感知して、異物であれば攻撃をしかけるという仕組みになっています。胎盤には、このHLA抗原が非常に少ないため、拒絶反応が置きにくくなるのです。しかし、NK細胞の働きが強ければ、胎盤ですら攻撃の対象となり、場合によっては排除されてしまうことになります。

NK細胞の活性が高い場合、その活性を抑えてあげることが妊娠の維持には有利に働く場合があります。かといってNK細胞の働きを抑えることは、免疫の働きを抑えることになりますので、あまり強く免疫を抑制することは感染症のリスクを増大し、結果として流産の危険性も増大させることになりかねません。また、もともと胎盤にはNK細胞の標的となるHLA抗原が少ないため、NK細胞の強さを踏まえてお薬の調整をする必要があります。NK細胞の働き自体を弱めるため、具体的には、ステロイド療法や漢方療法を実施しています。

一方で、NK細胞を初めとする、母体の免疫機能に赤ちゃんをきちんと認識させ、遮断抗体が充分に働ける環境をつくってあげることも重要になります。ワクチンなどの原理と似ていますが、免疫を刺激することで免疫の働きを沈静化していく事を目的として、M-CSF低値例と同様に、ピシバニールによる治療を補助的に行うことがあります。

その他の因子・その他の治療

血液凝固異常や免疫着床障害の他にも、不育症の原因はさまざまなものがありますが、大きく分けて次のようなものがあります。

以下、不育症の原因や検査、治療法等について、概要をお示しします。

感染症

クラミジアや梅毒などの慢性的な感染による生体防御反応等により流産を繰り返すことがあります。クラミジアは卵管閉塞など、不妊症の大きな原因となるため、当院通院中の方には検査を実施させていただいています。検査は血液検査です。梅毒をはじめとする他の感染症も、体外受精等を行うに当たり実施していただくことになっております。従って、当院受診中の方であればご心配される必要は皆無です。また、新たに罹患してもほとんどの場合は抗生剤等で完治することが可能です。

子宮の形態異常

双角子宮などの先天的奇形、子宮筋腫、頸管無力症やアッシャーマン症候群など、卵子が受精しても、その着床を妨げたり、着床しても発育を阻害してしまうことにより不育症となります。不育症となるほどの異常は、ほとんどの場合超音波検査や子宮卵管造影により比較的容易に判明します(頸管無力症は妊娠がある程度進まないと判明しません)。従って、経膣超音波検査を何回か経験されている方であれば、あまり心配する必要はありません。治療法は原則として経腟的手術等の外科的療法となります。

内分泌異常

黄体機能不全、高プロラクチン血症などの内分泌異常により、妊娠の継続に必要なホルモンが十分分泌されず、不育症となることがあります。一般的な産婦人科や内科でも測定される場合も多く、当院でも不育治療・不妊治療の過程において随時チェックしています。不妊治療では、補助的にホルモン剤を使用することも多いので、きちんと経過を追ってさえいれば比較的容易かつ速やかに対応することが可能です。

染色体異常

流産、着床障害、胚の発育停止などの最も大きな原因は胚の染色体異常です。性染色体異常やダウン症などの軽微な染色体異常であれば、妊娠が継続し出生することもありますが、重大な染色体異常の場合は、ほぼ100%流産をすることになります。人間の染色体は23対46個からなり、父親から23個、母親から23個が精子と卵子の中に含まれ、合体して23対46個として赤ちゃんに受け継がれます。ご両親どちらかの染色体に転座といって染色体の一部が他の染色体にくっついてしまっているような異常があった場合流産の危険率は極めて高率となります。染色体異常には治療法はありませんが、あらかじめ流産の確率を把握しておけば、心の準備や、出生に備えた羊水検査による出生前診断などが可能となります。

遮断抗体の異常

異物である赤ちゃんが母体の免疫による攻撃から守られるのは、遮断抗体の働きにより母体からの免疫反応を遮断されることにあります。リンパ球混合培養試験(50,000円)によりこの遮断抗体の状態を調べることができます。ただし、赤ちゃんを攻撃する主体はNK細胞となりますので、スクリーニングの検査でNK細胞の活性を調べた後に、治療経過を踏まえ、検査を実施することをお勧めしています。

HLAマッチング異常

HLA抗原(ヒト白血球型抗原)は、免疫による異物排除の標的であり、ここを感知して異物であれば母体の免疫が攻撃をしかけてきます。ご夫婦の相性があまりよくない場合、その両者を受け継いだ赤ちゃんは、より強力に拒絶反応を受けやすくなってしまいます。ご夫婦のHLA抗原タイピング検査(100,000円)を調べることで、流産の原因を突き止めることも可能です。高価な検査でもあり、遮断抗体同様、赤ちゃんを攻撃する主体はNK細胞ですから、治療を行っても流産を繰り返すような場合に実施します。

  • お願い当院では、提携医療機関以外の他医療機関で不妊治療をお受けの方の不育症検査は原則としてご遠慮いただいております。提携医療機関であっても、紹介状をご持参いただかなくては、現状等が把握出来ませんのでご遠慮いただいております。

不妊症と不育症、不妊治療における精液状態の把握は表裏一体であり、それぞれを切り分けて治療を行うことは大変困難です。特に高度生殖医療については、妊娠の成立・維持に医療の力が大きく影響を及ぼすため、不妊治療の情報がなければ、不育治療を行えません。

例えば、治療を行っても、残念ながら流産となった場合、全く当院と提携がない医療機関で治療をお受けであれば、移植胚や治療経過による流産なのか、不育治療の甲斐なく流産したのかがはっきりしないため治療の評価ができません。当院で不妊治療を行っていらっしゃる方であれば、その方の赤ちゃんを授かるための治療の全ての責任は当院にあるため、全ての情報が集約され、正しい評価と適切な治療を行うことが可能です。
当院では、当院で治療をお受けになる方の願いを叶えるため、責任を持った医療を提供させていただきたいと考えております。この点については、ご理解とご協力をお願いいたします。

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